【ホアキン・フェニックス主演】『JOKER』を見て思ったこと・感想・考察

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どうも、アメコミ映画好きのkenken726(@ken_ken726)です。

 

色々悶々としているので。

つらつらと映画『JOKER』について書いてみようと思う。

加筆・修正ありきで見ていただけると。

kenken726:ネタバレあります。

 

 

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プロモーションで「彼は如何にして悪のカリスマとなったのか」なんて言われているが、実際に作品を見た感想として、ジョーカーことアーサーは悪のカリスマを目指して、それを体現したわけではなく、市民の不満や憤りの捌け口となり、その器として“悪のカリスマ”にさせられたという表現がしっくり来るのではないかと思う。終始どこにでもいる“ただの人間”として描かれていたのもそのためではないだろうか。


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巧いなと感じたポイントとして、ラストシーン、ジョーカーがパトカーのボンネット上でステップを踏みながら道化を演じる場面で視点がジョーカー側からでなく、周りの観衆側だった点である。

これにより、私たちがこの作品から安易に到達しがちな「誰でもジョーカーになりうる」という結論ではなく、「誰でもジョーカーのような偶像を崇拝する観衆になりうる」と暗に描いているのだろう。(どちらにも捉えられるとは思うが)つまり「ジョーカーだったから崇拝の対象」となったのではなく「崇拝の対象がたまたまジョーカーだっただけ」と言っているのである。

そしてこれは他ならぬジョーカーことアーサー自身に対する皮肉ともなっている。実の母に裏切られ、愛していた職を失い、ジョーカーとして再起することでようやく自分の番が回ってきたように物語は展開するが、それすらも「たまたま」であり、「ジョーカーではないなにか」でも良かったのだとラストシーンで語っているのである。さらに狂気を感じるのは、アーサー自身もそのことを受け入れた上で、ジョーカーという人々の崇拝対象を演じているという点。数多の苦難を経験し、殺人を犯すことにすら抵抗のなくなった彼にとって、ジョーカーという存在も、この世界すらも幻想であり、彼自身もそれが幻想であることを理解している。だからこそ、彼だけが仮面のピエロではなく、実際に髪を染め、顔や舌をも白く塗り、ピエロそのものに姿を変えている。その幻想に自らの不幸や怒りを投影し、信仰や崇拝の対象としている観衆とアーサーが決定的に違うのはこの点といえる。言い換えるなら現実と虚構が別のものであるとはっきり自覚しながら、意図的にその境界線を曖昧にしているのである。

 

 

 

 

この作品に対して、ラストシーンの「That's life.」から物語のすべてが作り話ではないかという説や、救急車に追突され、パトカーの中から担ぎ出されたジョーカーがボンネットの上で踊るシーン~のちのバットマンブルース・ウェインの両親殺害、一連のシーンがジョーカーの妄想に過ぎないという説もある。が、私個人の見解としては、否。理由としては、精神科病棟のカウンセリング中のアーサーの振る舞いは、ジョーカーとして羽化したあとのそれであるためである。夢オチならぬ妄想オチはさすがにないと思うが、ともすれば、こうした論議がなされるような作品としたことが、“ジョーカーらしさ”を醸している。ジョーカーといえば、特殊能力ではなく、その頭脳と人間の心理を利用して、大衆を動かす天才として描かれることの多いキャラクターだからである。つまりこの作品を通して、ジョーカーというキャラクターは問いかけている。他でもない、「客席に座って、一見すれば悲惨とも言えるアーサーの人生を描いた作品、を見ている私達」に。

 

 

 

 

脱線しながら色々書いたが、この作品はいわゆる“ネタバレ”のような箇所がないのも、興味深い点のひとつである。主人公アーサーの日常を描き、職を失わせ、愛する母の裏切りに気づかせる。そして、なるべくしてジョーカーというキャラクターへと羽化する。アーサー→ジョーカーの羽化が作品全体の前半部で描かれているのであれば、その後の活躍(悪事を働くわけだから活躍というべきかはわからないが)を描くことで、私達が期待していたのかもしれない“いつものジョーカー像”に近づけることもできただろう。しかし今作は違う。ただただ、アーサーという男の人生を描き、ジョーカーへの羽化すらその人生の一部として描いているに過ぎない。それがこの作品の最も不気味かつ、魅力なのではないだろうか。

 

 

 

 

人によってはつまらないと感じるだろうし、眠いかもしれない。いわゆる“エンタメ”とは遠い位置にある作品なのかもしれない。それでも「普段映画を見ない人」でも、「アメコミなんて」と思っている人にこそ見てほしい、そんなことも思ったりはした。この作品を見た後に誰かと意見をぶつけ合うのは少し怖いが、こんな感想を映画に対して抱いたのは初めてかもしれない。そんな作品だ。

 

 

kenken726:纏まらないのでまた書きます。