【わたしたちに寄り添うヒーロー】『スパイダーマン:ホームカミング』 ネタバレ・感想・考察

 

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©2017 Marvel Studios

先週末「スパイダーマン:ファーフロム」(以下FFH)が世界最速公開されたわけだが、その公開を記念して金曜ロードショーで7/5(金)に前作「スパイダーマン:ホームカミング」(以下ホムカミ)が放映される。
何故かホムカミに関しては、記事にしていなかったので、ネタバレありで簡単に感想などを書いていこうと思う。

kenken726:まだみていない人はここで、そっとPCを閉じましょう…。

 

 

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過去作との違いは

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©2017 Marvel Studios

サム・ライミ版、マーク・ウェブ版と過去5本のスパイダーマンがすでに製作されているわけだが、それらの作品とジョン・ワッツスパイダーマンもといホムカミは大きく異なる点が幾つかあるので見ていきたい。

主人公ピーターが圧倒的に若い

設定上も15歳の高校生と若いが、演じているトム・ホランドも20歳と同じく若い。なおトム・ホランドは7,500名ものオーディション受験者の中から見出され、今作のピーター役を勝ち取っている。演技力と見た目はもちろんだが、パルクールでならした身体能力はさながらスパイダーマンだったというわけらしい。

説明おやじ:パルクールとはフランスの軍事訓練から発展して生まれた、走る・跳ぶ・登るといった移動所作に重点を置く、スポーツもしくは動作鍛錬のことじゃ。障害物があるコースを自分の身体能力だけで滑らかに素早く通り抜けるため、壁や地形を活かして飛び移る・飛び降りる・回転して受け身をとるといったダイナミックな動作も繰り返し行われるようじゃ。 

ウェブスイングシーンがほぼない

今作の舞台は主にクイーンズ地区の街。ピーターも住んでいる。これまでのスパイダーマンはニューヨークでも中心地区が舞台となっていることが多く、高層ビルが複数あったため、スパイダーマンの代名詞であるウェブスイングでの移動がひとつの見どころだった。もちろん、スパイダーマンの能力はウェブを出すだけではないが、今作ではこのウェブスイングのシーンに比べ、壁を登ったり、走るようなシーンが多い。ウェブを使った戦闘シーンもあるが何か建物にウェブを引っ掛け、その周囲を飛び回ったりする形が多く、これまでのスパイダーマンと一線を画する形で描かれていると言える。

 

トニーの参加、アベンジャーズ加入

ホムカミには厳密に言うと更に前作がある。ご存知「シビルウォーキャプテン・アメリカ」である。スパイダーマンシリーズは元々アイアンマンやキャプテン・アメリカと世界観を共有するマーベル・コミックの出身だが、これまでMCUに加入することはなかった。だが単独作が公開される前からシビルウォースパイダーマンが登場したことから、今作では平行世界ではなく、同じ地球が舞台となっていることが噂されていた。こうした背景もあり、ピーターの憧れであるトニーも登場し、彼にさまざまな助言、忠告を行い、最終的にはスーツを与え、アベンジャーズへ迎え入れる運びとなった。

 

 

新生スパイディ:ピーターのキャラ特性は

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©2017 Marvel Studios

これまでに計3人のスパイダーマンが実写作品では登場しているが、ホムカミにおけるピーター・パーカーのキャラクターについて見ていこうと思う。

 

とにかくトニーに認められたい

まず第一に挙げられるのがこれ。我々もそうだったように、「誰かに認められたい」という思いが強く、今作ではそれが裏目に出るシーンが多かった。
特にピーターにとってのトニーは、スーパーパワーを得る前から憧れの対象であり、直接トニーに会っている間のピーターの表情はそれをよく表していた。

 

ヒーローへの憧れが強い

これはトニーへの憧れとほぼ同義だが、今作のピーターはヒーロー活動に対しても相当甘い認識がある。そのため無茶をすることも多く、今作ではその度にトニーにたしなめられることとなる。

 

高校生としての自分も重視したい

冒頭でも触れたが、ホムカミのピーターは歴代の中でも最も若い16歳。ヒーローにも憧れているが、ガールフレンドも欲しいし、人気者にもなりたいのである。これは転じてヒーローとしての覚悟がまだないことも意味している。

こうしたキャラクター像から徐々にピーターが、ベタだがヒーローとしての羽化していく形で物語は進んでいく。

 

 

ヴィラン:ヴァルチャーの立ち位置は

 

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©2017 Marvel Studios

今作のヴィランはヴァルチャーこと、エイドリアン・トゥームス。彼は小さな日本で言うところの産廃や瓦礫を処理する会社を営んでおり、妻と娘の三人家族という設定。
振り返ってみれば、サム・ライミ版でもグリーン・ゴブリンには、ハリーという息子がおり、オクタビアス博士には妻がいたが、その関係性はストーリーで大きく描かれることはなかった。
しかし今作のヴァルチャーが悪に手を染めるキッカケとなったのは、自分の為ではなく、従業員のためであり、家族のためであった。そしてこのシーンは今作の冒頭のシーンとなっている。
この点でヴァルチャーは過去作のヴィランと違う、という印象付けを行うことができ、ピーターだけでなく、ヴィランにも観客の意識が向くように仕掛けられている。
また、こうしたヒーロー活動の裏で必ず起きているであろう“しわ寄せ”を喰った人を描くことで、「ヒーロー=正義」が誰にとってのものではないことを同時に描いている。
こうした描写は、ヴィランもひとりの人間であり、我々と同じように悩みながら嘘をつきながら生きている、という深みを生むことに繋がっている。

 

 

ホムカミという作品の面白さは

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©2017 Marvel Studios

ピーターはこれまでのヒーロー像と対局に位置するごくごく普通の青年として描かれている。言い方を変えれば、十代に誰しもが通ってきたであろう、大人への憧れ、自己承認欲、未熟さを体現しているキャラクターでもある。
逆にヴァルチャーは社会のしわ寄せを喰ったどこにでもいる市民のひとりというポジションとしている。
そして自分の会社、家族を守るためにやむなく悪に手を染めるしかなかったというキャラクターでもある。さらに言えば、家族にはそうした事情を伝えておらず、「それも家族のためだ」と嘘をつき続けている。

これらの設定は、いずれも大なり小なり誰しもに当てはまる境遇だと思う。
どちらも正しいし、どちらも間違っている状況なんてものはいくらでもあり、その中で自分を、まわりを騙しながら上手くやっていく、大人に近づけば近づくほどそうした場面は増えていくはずだ。

そして作り込まれたこれらのキャラクター性は、ホムカミという作品に我々を没入させ、自分自身とキャラクターを重ね合わせていく。
これはひとえに疑似体験への強烈な誘導となっている。

 

 

まとめ

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©2017 Marvel Studios

今回は「スパイダーマン:ホームカミング」について書いてみた。正直、強いメッセージ性があるわけではない。ただ一つ言えるのは過去作と違い、単なるヒーローの誕生譚、成長譚としてではなく、ヴィランを含めたキャラクターを緻密に描くことで、より私達の近くに寄り添うストーリーとなっている。
こうした小さな作り込みが積み重なって「ピーターの物語≒私達の物語」とシンクロしていくのだろう。
正式な続編であるFFHでは、ホムカミでやや不足していたアクションシーン、そしてピーターのヒーローとしての成長が描かれているため、こちらも是非とも見てもらいたい一本である。
そして、FFH鑑賞後、噛みしめるようにホムカミを見直してほしいものである。

 

kenkenは…

円盤ほしいな