ロバート・ダウニーJr、ジュード・ロウ主演の作品。
前作「シャーロック・ホームズ」もさることながら、今作「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」も傑作。好きすぎて既に何度も鑑賞している一本です。簡単にですが、衝撃の最後を含めて好きなポイントを解説していきたいと思います。
※ネタバレあります。
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1.原作をなぞった”最後”の描き方
今作ではホームズと宿敵モリアーティ教授の対決を中心に物語が進みますが、その最後はコナン・ドイル作のシャーロック・ホームズシリーズ「最後の事件」をなぞる形で終わりを迎えます。というのも、本作シャドウゲームでの最後、ラストシーンもスイスの瀧。原作と同じくアルプス山脈に在するライヘンバッハの滝でした。原作では目撃者が誰もいなかったことから、滝壺へホームズと教授が格闘の末、転落したのだろうと結論付けられましたが、シャドウゲームではその様子も鮮明に描かれています。もっとも、実際に格闘するわけではなく、お互い”ヴィジョン”の中での格闘なわけですが。前作では、ホームズがこの”ホームズ・ヴィジョン”を駆使し、数多くの局面をくぐり抜けていましたが、ホームズと同等かそれ以上の天才であるモリアーティ教授もまた、同じく”ヴィジョン”をみることができ、体こそ動かさないものの、脳内では熾烈な格闘が繰り広げます。そして勝敗さえもすでに脳内で決します。このシーンの直前にチェスの早打ちを両名はしていましたが、途中から盤面を見ずに脳内で打ち始めます。そして同時にお互いの状況を伝え、脅迫にも似たやりとりをしながら。痛快なのは、彼らが自らの才能を信じ、出し惜しみすることなく、ホームズであれば善の為に、モリアーティであれば悪の為に、その才能を行使する点でしょう。
2.ホームズの圧倒的な才能
なんといってもこれ。”ホームズ・ヴィジョン”もさることながら、ホームズの才能の真髄は、その洞察力と推理力です。特に印象的だったのは、2つのシーン。
①モリアーティ教授の研究室にあった園芸書籍と窓際にあった枯れた鉢植えから暗号解読に繋げたシーン
②マダム・シムザとホームズがダンスをしながら、いずれかの国の大使になりすました暗殺者を探すシーン
3.バレットタイムを用いた迫力の逃走シーン
同じシーンが複数の角度から見れたり、スローになったりすることで、息づかいの荒さや山中を走り抜ける音にも意識が向けられるシーンとなっています。また、同シーンは、ホームズたちは死の恐怖から、モラン大佐もまたしくじった場合の死の恐怖からかなり互い追い込まれている状況だったため、通常以上に集中し、そしてアドレナリンが過剰分泌された状態だったとも言えます。よく、スポーツ選手が「ゾーンに入った」「相手の動きがスローに見えた」と語ることがありますが、あの現象も同じく極度の集中状態やアドレナリンの効果であると言われています。映像として迫力満点であると同時に、彼らの心理状態、集中状態も表した秀逸なシーンと言えます。
4.総評
「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」について書いてみました。
原作を確実になぞりながら、ガイ・リッチーらしさも感じられるアクションシーンや演出、もはや一探偵の冒険譚というジャンルを優に超えている作品。ながらで見ようと思っても途中から画面に釘付けになってしまうような魅力がこの作品にはあります。それはホームズとワトスンの友情であり、ホームズの圧倒的な才能であり、モリアーティという魅力的な悪役あってのこと。原作と俳優と監督、脚本、カメラワーク、その全てが絶妙に絡み合ってできるバランス。傑作です。
「ジュードとは会った瞬間に意気投合した。彼には洞察力があって、最高のホームズ映画を作る意欲が伝わってきた。映画評論家たちが僕とジュードのケミストリーが素晴らしいと褒めてくれるけど、『ケミストリー』って普通は男女のラブストーリーに使われる言葉だよね。別にラブコメを作ったわけじゃないけど、この映画はある種の愛の物語といってもいいかもしれないね」-”映画.com”ロバートダウニーJrインタビューより
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