〔動詞「とどめる」の連用形から〕
人を殺すとき,最後にのどを刺したり急所を突いたりして息の根を止めること。 「 -の一撃を加える」引用元:https://www.weblio.jp/content/%E3%81%A8%E3%81%A9%E3%82%81
単純に捉えるなら、キスして”トドメを刺す”という設定となる。
未見の方に向けてというよりは、既に全話見た上で、読んで頂ければ幸いかと思う。
⚠以下ネタバレを含みます。
まず、先にも触れたタイトルに関してだが、キスして死ぬこと、そして時間を遡ること、このあたりは無論”トドメ”だと思うが、ドラマ全体で考えると主人公:旺太郎の
金と権力だけを追い求め、成り上がる生き方そのものにトドメを刺された
と言わざるを得ないだろう。本作のヒロインである宰子との”キスの契約”によって共に過ごす時間が増え、そのなかで知らず知らずのうちに愛が芽生えてしまった。ここだけを切り取れば、有りがちな展開だが、役柄上、No.1ホストとパッとしないデリバリーバイトという組み合わせ、そして事ある毎に旺太郎の口から発せられていた”愛なんか信じるから”という言葉も加味するとこのカップリングは予想できたとはいえ、微笑ましくもあった。(個人的な好みの問題もあるとは思う)
その証拠というわけではないが、最終話、3ヶ月前に遡った旺太郎は、関わった人々一人ひとりを救うために、幸せに向かうことができるように手助け、アドバイスをしていく。(和馬に関しては別だが)
ここで美尊と尊氏に向けて伝えた
お前たちの未来に関する大事なことなんだよ
未来の君と約束したんだ、今度こそ幸せになって
は、不覚にも大好きな作品であるBTTFを思い出してしまった。未来を知っているからこそ変えたい今を明確にイメージさせてくれる、良いセリフだと思う。(タイムリープものということで、製作陣が意図的に入れ込んだものなら尚良し)
こうしたラストを描くことで、共に過ごした宰子との時間、そして美尊からの言葉は無駄ではなかったことを視聴者に伝えてくれる。それは旺太郎が宰子に向けて届けた
お前ならいつか、そのキスを受け入れてくれる人に出会えると思う。
バチが当たっただなんて今は思ってるかも知れないけど、そんなことないからな
お前はもっともっと、幸せになれんだよ。
だから……クズには騙されるな。
もう一回言うぞ? 俺みたいなクズだけは好きになるな
という言葉にも込められていたと感じる。ここで旺太郎との記憶がないにも関わらず、旺太郎の心からの言葉に涙する宰子も良かった。
元々、父親の賠償金を肩代わりするようなくらいなため、自己犠牲心の強い主人公であるとも取れるが、”それもこれも自分のため”と語っていた旺太郎のこうした変化は見ていて暖かな気持にさせてくれる。
さて、しばしばタイムリープものやマクロスなどのヒロインが登場するアニメでは
本当に想ってくれているのならそばにいて
というやり取りがヒロインとの間に交わされるが、本作においては、周りの状況やタイミングを言い訳にせず、主人公自身がすべてを考えた上で、自分と一緒にいるべきでないと決断している。使い古された表現でいうなら”それが一番幸せな形だ”と本心から思っているからこその決断なのだろう。
逆に言えばラストでここに繋げる為に、ホストという、ひと時の愛を振りまく存在を上手く使ったのかもしれない。さすがの一言である。
菅田将暉演じる春海に関しては、正直予想外の切り口からクライマックスに加わったが、女性ファンの歓喜が目に見えるので水に流そうと思う。奇をてらったような、ホームレスという実生活とはかけ離れた役柄、そして全体から考えれば、短い出演時間にも関わらずその存在感はさすが。売れっ子と言われるのも頷ける。演技を齧ったこともない為、感覚でしか言えないが、自然体の中にも抑揚のようなものを感じる演者だと思う。
その菅田将暉が歌う主題歌もこれまた中二病心を擽るような楽曲となっている。
これも良かった。
MV 菅田将暉 『さよならエレジー』 [Ost. トドメの接吻] / Masaki Suda - Sayonara Elegy (Ost. Todome no Kiss)
なかでも取り上げたいのは、以前から交友のあったシンガーソングライターの石崎ひゅーいが楽曲提供している点だろう。どこかもの悲しげな、遠回りするような詞だと思う。特に
冷めたぬくもりをむやみに放り投げた
僕が愛を信じてもきっといなくなるんだろ?
それならいらない寂しすぎるから
の部分はタイアップ曲とはいえ、物語、そして旺太郎の心情を歌い上げているようにしか聞こえなくなってくる。弱い部分を見せることの少なかった、彼の心の裏側がこの曲から少し見えるようにも感じる。
タイムリープや時間を前後するようなテーマは、昔から幾つもの作品で描かれている。後から振り返ってみれば、本作もその中のひとつにすぎないだろうが、少なくとも私にとって、今の生活、幸せについて考えるきっかけにはなった作品だった。製作陣に感謝したい。そういった意味でいうのであれば、アバウト・タイムにも似た作品だったのかもしれない。
kenken726は…
(たまに世間の評判と違うところにハマる。)