またひとつ
傑作ドラマがその幕を閉じた。
このドラマのどのあたりが傑作なのかは、世間の評判から周知のことかと思う。
たまたま生かされているだけの私たちが”死”にどのように向き合うか。
”死”というテーマを内包しながら、真実にこだわり、走り続ける主人公たちの姿を絶妙なバランスで描いた本作は何故、傑作たりえたのか。
その一因として主題歌である「Lemon」は外せないだろう。
Lemon=レモン=檸檬
”夢ならばどれほどよかったでしょう”という歌い出しで始まるこの曲は、毎話そこ以外ないだろうタイミングで流れ込んでくる。
忘れたくなるような過去や亡き恋人に重ね合わさるように。
歌詞が常に過去形であることから、今は亡き相手へ向けて、亡き相手を想っての曲であるといえる。
中でも
自分が思うより
恋をしていたあなたに
あれから思うように
息ができない
https://www.uta-net.com/song/244127/
では失って初めてその大切さに気付く感情が描かれている。誰にでも分かる言葉で。
また、MVの中で米津氏がハイヒールを履いているシーンが登場するが、大切に想っていた人を今でも想い続けていることを表現しているとみえる。男性が履くハイヒールは周囲から見れば、異質なものだが、”その人”と自分にだけ分かるサインのような。また、ハイヒールは中世ヨーロッパで「汚物を踏まずに歩くための靴」として作られたものであり、暗に”それでも歩いていかなければならない”と言わんとしているのかもしれない。
また、
切り分けた果実の片方の様に
今でもあなたはわたしの光
https://www.uta-net.com/song/244127/
では、あなたを失った今も、元々ひとつだった果実のように存在を感じていることが描かれている。”切り分けた”という表現から、自然な死ではなく、何らかの原因で死別れてしまったともとれる。
Lemon=レモン=檸檬
余談だが、檸檬の花言葉は”誠実な愛””心からの思慕”であることから亡き愛する人への想いを歌った鎮魂歌であると思われる。
また、lemonは英語圏のスラングで”不完全な””欠陥品の”という意味で使われることもある。
愛する人のいない世界は不完全で、欠陥品だという意味も曲のタイトルにはあるのかもしれない。
悲しみだけではなく、今でも感じる光を歌うこの曲は、前を向いて歩くための希望を静かに、しっかりと伝えてくれる。
kenken726は…
(名曲。)